毎日の安全な業務、お疲れ様です
暑さも和らぎつつ、いくらかは過ごしやすく、充填、荷卸しもしやすくなってきました。
涼しくなってきた半面、夏の疲れから眠くなりやすいといったことも多くなってきたのではないでしょうか?
わずかな休憩であっても眠気が取れるということがありますので、無理をせず適時休憩をとって安全運転でお願いします。
人には、やはり二面性があるもので自分に非が無く賠償金、保険金といった類の金銭が入るとなれば、必要以上に通院等をすることもあると思います
そもそも、加害したのはこちらな訳ですから、正当な請求であるとも言えます。
示談成立がしていない事故については、不正があるとしても保険会社に一任している状態ですので、悪戯にかき回したりせずに見届けたいと思います。
さて、これらの事故ですが、皆さんも聞いたことがあるかと思います。
事故の割合についての法則で『ハインリッヒの法則』というものがあります。
ヒヤリとした事象300件があったとしたら、軽微な事故は30件、重大な事故は1件発生するといわれるものです。
業務中にヒヤリとしたり、ハッとしたり、そういった経験はみなさんあると思います。
そういったヒヤリハットした事象が続いた先にある重大な事故をヒヤリハットした情報の共有や、自身の経験の中から『こうなるかもしれないから○○をしておこう、○○に気を付けよう』と予想して予防策を講じているはずです。
ただ、ローリーの運転、荷役、共に毎日のことだから希薄になりやすい、形骸化しやすい、慣れてしまっているということもあるかと思います。
そこで、繁忙期を迎えるにあたって、今このタイミングで皆さんには我々が日々行っている石油タンクローリーでの業務について、権利と義務という話を織り交ぜながら見つめ直してもらいたく、このような時間を作りました。
そもそも、三石も元運転手ですから、『結果良ければそれで良い』と思っていたこともあります。
ですが立場が変われば、当然に主張も変わるものだと、そこは諦めてお話を聞いて下さい。
今回これからする話で、この運転職という職業の義務、責任についての理解を深めることで、結果として長く太陽運輸があり続けるように。
長くみんなが、この職場で厳しくとも楽しく働き続けていけるように実りある時間にしたいと思います。
石油タンクローリーの仕事の義務と責任
最近にあっては過労による自殺や、適切な運行管理によらない重大な事故等もあって、
働き方改革等関係法の法改革とそれに伴う、労働環境の変化を耳にする機会が増えてきました。
現在ある諸問題について行政による規制を行っている状態です。
新しい規制によってより良い社会を作って国民の福祉の増進、利便に資す。といったところでしょうか?
この規制っていうのは法律ですね。
働き方改革等関係法の法改革ですから。
この法律とは国家による強制力を持った規範といえます。
強制力というとなんか嫌だなと感じると思いますが、この法律も我々が選挙で選んだ国会議員が国会で立法したわけですから、我々が作った法律とも言えます。
ですが、我々一人ひとり主義主張は異なりますから、この国による規制というもの一概にすべてが良いとは言い切れず、人によっては人権侵害だ!と言いたい人もいることと思います。
残業が減ったことによる所得の減少が見込まれる為、必ずしも全員がこの政策に賛成なのではないと思います
現在の労働人口はほとんどが平成生まれや昭和生まれであって戦後の昭和20年以降生まれの皆さんがほとんどですね。
先ほど、人権侵害だと申しましたが、戦前にあっては明治憲法または大日本帝国憲法とよばれるもの中で、第1条から17条に天皇主権である旨の記載がありました。
また国民(明治憲法下では臣民)の人権については法律の留保があったとされており第18条から第32条までに記載がなされています。
憲法によって人権が保障されていたのではなく、法律に定められた事柄において保障される程度なのであって現在の人権とは違っていた言われています。
これを『法律に留保されていた』といいます。
「法律の留保」があったとされる事柄については、臣民の要件、資格による分武官、公務の就任、兵役、納税、居住、逮捕監禁審問処罰の制限、裁判、住所の侵入、捜索、信書の秘密、所有権と公益の衡量、信教、言論著作印行集会、結社、請願、抵触軍人への準行、または有事の際の天皇(てんのう)大権(たいけん)の施行を妨(さまた)クルコトナシ(くることなし)とされ、憲法条文には『法律の定めるところにより』や『臣民の義務に背かない限りにおいて』といった語句が多く引用されていました。
現在では、これらの条文は日本国憲法に明記されているものが多くあります。
戦後の日本で現在の日本国憲法ができることで、明治憲法との大きな違いが出てきましたがmそれは、国民主権であるということです。
憲法前文においても国民主権であると明記され、基本的な人権規定として日本国憲法第3章、第10条~40条にあげられています。
これにより私的自治の原則・契約自由の原則も相まって一見自由だよと認識できる状態になっています。
その中の一つで憲法22条。
これは、どのような職業についてもどのような地域に住んでも構わない。
なりたければその職業に就くための努力をしてもよい。
営業をするためにどこの地域に住んでも構わないということです。
22条 居住・移転・職業選択の自由、外国移住・国籍離脱の自由
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
憲法にも明文化されていますが、我々国民には第26.27.30条にて納税、教育、勤労の義務が課されていますが、それ以外にも12.13.22.29条の自由権、財産権について「公共の福祉に反しない限りにおいて」、「公共の福祉のために」並びに「公共の福祉に適合するように」と明記されています。
26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を
受ける権利を有する。
すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義
を負う。義務教育は、これを無償とする。
27条すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
児童は、これを酷使してはならない。
30条国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。
12条 自由・権利の保持義務、濫用の禁止、利用の責任
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う。
13条 個人の尊重、生命・自由、幸福追求の権利の尊重
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
22条 居住・移転・職業選択の自由、外国移住・国籍離脱の自由
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
29条 財産権
財産権は、これを侵してはならない。
財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。
私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。
日本国憲法の中では『人権』一番大切にしなければならないものであって、人権は尊重されなければならないのですが、この人権は人間にだけ与えられた権利なので、犬、猫にはないです。
道にいる野良犬や、野良猫を車で轢いても罪には問われません
これが飼い犬、飼い猫だと器物損壊罪になります。
飼い犬、飼い猫は『物』になるので、他人の所有している財産権の侵害になるわけです。
刑法261条
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役、又は30万円以下の罰金に処する。
だからと言って「自由だよ、だから何をやっても良いのだよ」というのではなく、制約や責任はついてきます。
未成年者の場合、「自己加害の禁止」(酒、たばこ、食育)という干渉はあるのですが、自由だ、自由だと言って人を殴る、金品を奪う。
それは無秩序なだけであって自由なのではなく、他人の人権を侵害していますね。
制約があって、その中であれば自由なのであって、何をしても良いわけではないのです。
自由権の一つである、22条の職業選択の自由についてはどのように考えるか?
「職業選択の自由があるよ」とはいっても、誰でも弁護士や医者になれるわけでもなく、
そこには日本国という国家による制約が出てきます。
どんな職業についてもかまわない、但し、公共の福祉に反しない限りにおいて。
さっきから出てくる公共の福祉、何のことと思うでしょうか。
道徳の問題としては何となくわかるかもしれないけれど、ここでは「自分以外の他人の人権」と解釈してもらったらわかりやすいと思います。
人権は大切なんです、だから他人の人権も尊重されないといけない。
国が公共の福祉に反しない限りにおいて、他人の人権を守れるように、「積極的又は消極的」にではあるが制約をかけています。
この人に医者としての職業をさせたことによる公共の福祉(他人の人権侵害)は大丈夫か?
技術水準は確保されているかな?
医者は患者の体をメスで切るわけですから、傷害罪に問われかねないわけです。
だから、医師を目指す人は医大にいって国からの医師となる許可を得て正当な業務として就職するわけです。
刑法204条 人の身体を傷害したものは15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
犯罪となる条件としては構成要件、違法性、有責任性のいずれも満たした時です。
構成要件とは条文のこと。「人の身体を傷害したものは15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
違法性は、正当な業務ではないこと。
この場合は医者がする適切な医療行為への期待権の侵害がないことで違法性が阻却されます。違法性阻却事由といいます。
また有責性については責任能力が無ければ罰せられません。
刑法39条
心身喪失者の行為は罰しない。
同上2項
心身耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
ちなみにですけど、刑法39条2項の心身耗弱者の行為は、その刑を減軽する。ですが、
自ら酒を飲んだり、危険ドラッグをしたりして判断能力を喪失させても自動車運転死傷行為処罰法2条1号で罰せられますし、『運転』じゃなかったとしても、『原因において自由な行為』として薬物使用時において責任能力があれば、完全責任能力を問えるとした判例があります。
さて、皆さんは憲法22条の居住・移転・職業選択の自由、外国移住・国籍離脱の自由と
27条、勤労の権利・義務、勤労条件の基準、児童酷使の禁止という権利をもとに
自ら選んだ職業として、誰に強制されるでもなく、この会社に就職をしています。
我々の仕事である危険物のタンクローリー運転手、会社として見たら貨物自動車運送事業ですが、大きくくくれば、ものを運ぶという仕事ですね。
これにも国の許可が必要になってきます。
太陽運輸も、国土交通省の定める基準に従って陸運支局等に届け出て安全な運行と適切な管理を行うことができると認識できる状況を確保維持させることで貨物自動車運送事業の許可を得て事業を行っています。
3年前から数人に朝点呼をやってもらっていますが、この運行管理者資格についても、やはり国の基準による適切な運行管理として、出発する際の健康状態、行先、注意点等の確認と伝達を行うことで『輸送の安全の確保』と『運送事業の健全な発達を図り』もって『公共の福祉の増進に資する』ようにする。
それらを見定め、継続させる為に国からの許可と事業主からの権限を委任された者が運行管理者として朝、夕の点呼に入ってもらっているわけです。
皆さんもそうです。
皆さんにあっては大きな車で石油製品を運ぶ。
大きな車を乗るのは大変危険だ。
だから国土交通省の大型車両を運転するための許可を得てください。
石油製品のガソリン、灯油、軽油、重油は危険だ。
だから総務省が管轄する危険物乙種4類の取り扱い免状を取得してください。となっているんです。
製油所での見極めにあっては、 安全な荷役ができることの証明をして責任の所在を明確にする。
この見極めも例えばJXTGから委任された東伸工業さんは、善良な管理者の注意義務が必要になってきますので、施設が適正に運用されるように自己の持ち物よりも高い注意をもって管理をする義務が生じています。
(部分社会の法理=法律ではないがその分離した社会において広く世間一般の常識と比べて著しく不当、若しくは社会生活上の影響が大きすぎない程度での独自の基準)
民法644条
受任者は契約の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
この見極めも含め、やはり誰にでもできることは言えないですね。
だから同じ運搬業であるほかの荷物を運送するドライバーよりも賃金面で差が出るのです。
できる人が少ないんだから。
(一般貨物のドライバーの給料は決して今の太陽運輸よりも優遇されているとは言えない)
ただ、その権利とセットで考えなくてはいけないのが、義務です。
権利と義務。
ちょっと面倒くさいと感じる人も出てくるかもですが、権利があったら、義務があるんです
他人の人権を侵害しないように。
権利と義務の履行は、ごくごく日常の中で当たり前に発生しています。
コンビニでたばこを買う。
コンビニは店に商品を並べることで売るという意思表示をし、客の買うという意思表示によって売買契約が発生します。
契約をしたのだから、客は煙草をよこせと権利を主張する。
店は煙草を渡すのであれば金を払えと権利を主張する。
金を受け取ったのだから、商品を渡す義務が発生する。
商品を引き取ったのだから代金を払う義務が発生する。
ただ、未成年者に対しては先ほどの自己加害の禁止『パターナリスティックな制約』として加害をする行為を制限しています。
私は20歳以上ですというタッチパネルがそれですね。
(国家が個人の利益を保護するために課す、自己決定権に関する制約。未成年者が喫煙や飲酒などの自己加害とみなす行為に対する制約。)
詐術を用いたことについては追及をされていないですけど。
我々と太陽運輸との間では、労働力の提供と労働に対する対価としての賃金の支払いを債権債務として、労働契約を締結しています。
相互に権利と義務のある状態です。
労働契約は双務契約をしているといえます。
我々は会社のした運送指示に対して、配送を行い労働の対価としての賃金をもらう。
会社は配送した労力の対価として、賃金を払う。
ただ、この仕事にも義務や責任がついて回ります。
俺は、私は、国から認められた危険物を取り扱う資格と、大型車両を運転する許可がある。
しかし他人の人権を脅かす可能性が大きい。
なぜならばローリーをひっくり返して火災事故を起こせば、首都高池袋線の事故のように、首都圏の物流に大きな影響を与える。
ひとたび横転、漏洩事故を起こせば、地域住民の避難なり、原状回復であったりと大変な費用と労力が必要になります。
(JXTG丸運が横浜町田インターで横転漏洩した死亡事故)
だから高い注意義務が必要だと考えるわけです。
ここでよく耳にする業務上の注意義務とは、一定の業務に従事する者は通常人に比べて特別の注意義務を持つこととされています。
業務上とは本来、人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であり、かつ、他人の生命、身体に危害を加える恐れのあるものであること=有償、無償を問わない)
だから仕事中ではなくても車の運転をすれば業務上となるわけです。
又、人が社会生活上の地位に、、とはタンクローリーに乗ってもよいですよーという地位です。
似た言葉で故意、過失、重過失というものがあります。
故意は、「認識の予見、決意の実行」です「こうなると分かっていた。あえてとやった」ということ。
過失とは「結果の発生の予見、未然防止の可能性と義務があったのにしなかった」
さらには重過失というものは、こちらはほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態をさすものとされる過失です。
うっかりの度合いが大きいから重過失として普通の過失よりも大きな責任を取ってもらおうというもの。
何かしらの事件を起こした時に、「本来、このような注意義務があるのにいい加減な奴だな。」といって非難はできても国民感情だけで罰せるというわけにはいかないです。
日本は法治国家ですから、構成要件である罪の種類と罰則をあらかじめ決めておかないと罪にとわれないんです。
憲法に書いてあることを要約すると罪刑法定主義だって書いてあるんです。
文字は明記されていないけれど、基本的人権であるとして、憲法31条から40条までに書かれているんです。
憲法31条 法定手続きの保障 何人も法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。
憲法32条 裁判を受ける権利 何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。
憲法33条 逮捕に対する保障 何人も現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない
憲法34条 抑留・拘禁に対する保障 何人も理由を直ちに告げられ、且つ直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は拘禁されない。
又、何人も正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
憲法35条 住居侵入・捜索・押収に対する保障 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
②捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行う。
憲法36条 拷問及び残虐な刑罰の禁止 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
憲法37条 刑事被告人の諸権利 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
②刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ、又、公費で自己のために強制的手続きにより証人を求める権利を有する。
③刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
憲法38条 不利益な供述の強要禁止、自白の証拠能力 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
②強制、拷問もしくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
③何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
憲法39条 刑罰法規の不遡及、二重処罰の禁止 何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。
又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない。
憲法40条 刑事補償 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の判決を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。
人権として保障されているから、あいつはひどい奴だ、だから懲役にしてやるとかはできないんです。
平成11年11月28日15時30分頃。
東名の飲酒運転事故で児童2名が死亡する事件がありました。
業務上過失致死罪に問われ有罪判決を受けています。
高知と書かれた青果トラックの事故ですよね。
運転しながら酒飲んで事故を起こさないわけがない、ましてや大型のトラックで高い注意義務が必要なのに。
でも懲役最大5年なんです。
刑法に書いてあるんです。
刑法211条、業務上過失致死傷罪、業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は5年以下の懲役若しくは禁固又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も同様とする。
目の前で自分の子供が焼け死んでいく様を見続けたご両親。
酒を飲んでいた運転手。
感情だけで言ったら極刑でも足りないと感じていたかもしれない。
でもこれが罪刑法定主義なんです。
罪の構成要件と罰の効果を明文化して皆が知れるように施行していないとダメなんです。
人権を守るためにした罪刑法定主義が被害者家族を制約して救済がなされない。
こんな事故があれば、規制は厳しくなってもおかしくないですよ。
実際にはこの東名高速で惹起した事件の被告には東京高裁で2001年1月12日に懲役4年の実刑判決が確定しました。
ここで反転
しかしながら、この事件の後、平成25年11月27日公布、平成26年5月20日施行されたのが、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」です。
自動車運転死傷行為処罰法第5条過失運転致死傷
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は7年以下の懲役若しくは禁固又は百万円以下の罰金に処する。ただしその傷害が軽いときは、情状によりその刑を免除することができる。
免除だから有罪ではあるんだけど刑罰を科さないよということ。
さらには悪質な運転による死傷事故については
同法第2条 危険運転致死傷罪は次に掲げる行為を行い、よって人を負傷させたものは懲役15年以下、人を死亡させたものは懲役1年以上の有期刑に処する。としています。
同条1号アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2号 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為。
3号 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為。
4号 人または車の通行を妨害する目的で、自動車の直前に進入し、その通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
5号 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
6号 通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。
同法第4条ではアルコール等による事故であることの発覚を免れる目的でアルコールの摂取をし、または体内のアルコールの減少をさせる目的でその場を離れることは懲役12年以下としています。
事故や判決の結果がどんなに理不尽でも、感情が高ぶったからと言って人を殴ってはならないのです。暴行罪ですから。
自力救済、(民法の概念)自救行為(刑法上の概念)は一般的に認められていないので
法律によって処罰を求める。ということになっています。
(一定の権利を有する者がその権利が侵害された場合、法律上の手続きによらないで実力による救済を図る行為を、刑事法では自救行為という。債権者が法的手続きによらずに自力で債権を回収する行為や窃盗の被害者が盗まれたものを自力で取り戻すような行為)
例外として権利の回復が不可能、又は著しく困難になる場合で、かつ権利回復について必要最低限の方法であると認められる範囲内であれば容認され得る。のですが。
我々のしている仕事については、高い注意義務が必要であること。
それを怠ったことによる罪は法律で定められていること
その責任の取り方を決めるのは裁判所であって、条文と判例を使うこと。
刑罰については罪刑法定主義にならって類推解釈をしないことになっています
さらに民事上では被害者救済のために原理原則を持ち出すこともあります。
(比較衡量、法益)
事情によって信義則に反する権利の濫用であるとして強引に結果を捻じ曲げたりもするし、違憲判決を導いたりすることもあります。
(ホワイトハンズ宇奈月温泉)
民法 第1条2項 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。 S10
(尊属殺重罰規定違憲判決)
刑法200条(削除) S25人類普遍の原理 S43 刑39-2 刑66
ただこう言った判決に至るのはごくまれです
ごくまれだから、例外として何度紹介されるんです。
基本的には、慣れや慢心によって危ない仕事であるという意識が薄れてしまっていた。
高い注意義務が果たせていなかった。
結果的に他人の人権を侵害してしまった。
そのあとは制裁があるんです。
ごめんなさい。はいらなくて、国は刑罰を、原告は損害賠償をせよと言ってきます。
幾ら誠意をこめて「申し訳ない、ごめんなさい」といっても納得はしてくれず、お金を払うことで解決を図ります。
もちろん会社には不法行為(民法709条)による損害賠償について使用者責任(民法715条)というものがあって一次的には会社が被害者に対して賠償を行います。
ですが、その原因について故意、又は業務上の注意義務を果たせていなかったとき若しくは重過失があったとき、単なる過失であってもその過失割合に応じて求償(民法715条3号)ができるとされています。
また労働契約は双務契約なので債権者、債務者の関係にありますから、それによって発生した損害について、(民法415条)債務不履行による損害賠償請求権が発生します。
石油製品をどこそこまで運んで来てっていう労働契約上の債務があって、その労働の対価として給料が支払われる。
この労働契約上の債務は安全に仕事を終えるという一定の推定が働きます。
損害を発生させることを目的として労働契約をしているわけではないですから。
不法行為を目的として労働契約をしているとしたら、反社会勢力ということになってしまします。
リスクの回避という観点で保険には入りますが、事故が起きないように適性診断を受けたり、安全会議が実施されたりするわけです。
もちろん不可抗力の事故もありますよ。
特約等も無く、責任の所在が不明確なときは危険負担の問題として処理をし、必要があれば保険で清算をします。
(消滅した債務の債務者側が無き寝入ることを債務者主義、債権者が無き寝入ることを債権者主義と言います。)
民法536条 当事者双方の攻めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができる。
同上2項
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。
この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を受けたときは、これを債権者に償還しなければならない。
民法709条 不法行為による損害賠償
故意または過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
民法715条 使用者等の責任
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
2項 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3項 前2項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
民法415条 債務不履行による損害賠償
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2項 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
1号 債務の履行が不能であるとき
2号 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
3号 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
※ 労働基準法では、使用者が、労働契約の不履行について違約金を定めることや、損害賠償額を予定する契約をすることを禁じている
【労働基準法第 16 条】が、これは、現実に生じた損害(労働者の債務不履行、不法行為に基づく損害など)について賠償請求することを禁止するものではない
【昭 22.9.13 発基 17 号】。
2 労働者が負担する損害賠償の程度
労働者に損害賠償責任があり、使用者にも求償権があるとはいえ、
ア 使用者が労働者の労働によって利益を得ているにもかかわらず、業務を遂行する中で発生した損害のすべてを労働者に負担させるというのは公平を欠いていること、
イ 使用者と労働者には著しい経済力の差があること、
ウ 使用者は、経営から生じる定形的危険について、保険制度を利用するなどして損失の分散を図ることができること
などから、発生した損害については労使双方に公平な分担を求める、つまり、労働者の責任が制限されるべきものと考えられている。
また、労務の履行に伴いその過失により一定の損害が発生することは軽微なものも含めれば不可避である(事務 職員のコピーミス、飲食店員の食器の破損等)。些細な不注意により損害が発生したとしても、そのような損害の発生が日常的に発生する性質のものである場合、損害の発生は労働過程に内在するものとして、その損害は使用者が負担すべきものと考えられる。
判例では、タンクローリー事故を起こした運転手に対する求償について、
「使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである」との判断基準が示され、求償権を損害の4分の1に制限している
【茨城石炭商事事件 最一小判 昭 51.7.8】。
従業員が居眠りによる事故により工作機械を破損したという重大な過失が認められるケースでは、債務不履行による責任は免れないとしたうえで、深夜労働中の事故であることや、会社が機械保険加入等の措置をとっていなかったこと等の事情を斟酌し、責任を損害の4分の1とした判例がある
【大隈鉄工所事件 名古屋地判 昭 62.7.27】。
さらに、従業員が 4 トントラックを運転中にトンネル側壁に衝突して車両を損傷させたケースでは、従業員には、事故の発生を防止すべく、路面の状況や車両の整備状況、積載物の重量に応じた速度で走行する等の安全運転すべき注意義務があるところ、これを怠りスリップさせたと推認されるとし、過失の寄与を否定できないとしつつも、会社が車両保険に加入していないことや、交通事故は、会社の労働条件や従業員に対する安全指導、車両整備等にも原因があったことや従業員の勤務態度等を総合的に考慮し、負担すべき額は損害額の 5 パーセントとした判例がある
【K興業事件 大阪高判 平13.4.11】。
※ なお、使用者は労働者に対し、賃金の全額を支払わなければならず、一方的に賃金を控除することはできない
【労働基準法第 24 条第1項】。使用者による賃金債権の「相殺」も「控除」の一種と
して禁止される。判例では、賃金債権に対しては、使用者が損害賠償請求権をもって相殺することが許されない旨判示されている
【関西精機事件 最二小判昭 31.11.2】。
したがって、使用者は、賃金を全額支払ったうえで、別途労働者に対して損害賠償請求を行うことになる。
但し、労働者が自由な意思に基づいて、賃金から控除(賃金債権と債務との相殺)することに合意した場合は、有効とされている
【日新製鋼事件 最二小判 平 2.11.26】。
被害者の救済が第一に考えられるべきですから当たり前のことですが、場合によっては自身にも賠償責任が来るということは知っていてもらいたい。
実質的には無過失責任と言われる使用者責任ですが、安全の担保の為に様々な安全教育が行われています。
事故をなくすことを目的にして行われているわけですが、損害を与える意図で故意に行ったとされる又は業務上の注意義務がなされたとは言えない若しくは、あまりに重過失であるとした状況であれば求償されるのはやむを得ない結果だと考えられます。
誰もができる仕事ではないのですから、そこに発生する責任については当然について回るものとして、安全に対する意識、定期に行われる安全会議の内容について形骸化することなく日々の業務にいかしてもらいたいと思います。
以下に主な関連のありそうな刑法犯の刑罰についても紹介します。
刑法204条 傷害罪 15年以下の懲役または50万円以下の罰金
209条 過失傷害 30万以下の罰金または科料
210条 過失致死 50万円以下の罰金
211条 業務上過失致死傷 5年以下の懲役もしくは禁固又は100万円以下の罰 金
235条 窃盗 他人の財物を窃取した者は窃盗の罪とし10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する 時効7年
252条 横領 自己の占有する他人の物を横領した者は5年以下の懲役に処する。 時効3年
253条 業務上横領 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は10年以下の懲役に処する。 時効7年
256条 盗品譲受等 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得され物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。時効3年
256条2項 前項に規定する物を運搬し、保管し、もしくは有償で譲り
受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。 時効7年
不法領得の意思 横領罪の成立に必要な不法領得の意思とは他人の物の占有者が委託に背いて、その物につき権限がないのに、所有者でなければできないような処分をする意思をいう。
無償譲受け 贓物収受罪は、贓物であることの情を知り無償でこれを収得した場合に成立する。
最判昭23.3.16
有償譲受け 贓物故買罪は、情を知って売買、交換等有償行為により贓物を受領することによって成立する。
大判大2.6.12
重油船の船長が重油配送の途中に封印のない船倉から欲しいままに重油を汲み取る行為は業務上横領罪に当たり、封印のある船倉から汲み取る行為は窃盗罪に当たる。
大判昭25.6.6
権利と義務については以上になります。
こんなの知っているよという人もいると思いますが、自分のした行為によっては
構成要件、違法、有責と条件が揃えば、刑法犯となり得るわけです。
事故が多い、自己の原因が非難されるようなものであったなど、信用の無くなった運送会社に配送の依頼があり続けるのか?
我々の生活を守るためにも行為と結果の予見を忘れることのないようにしてください。